2020東京オリンピックのメリットとデメリット

東京オリンピックメリット

はじめに

6月27日、2020年東京オリンピックに向けてのIOCと国内組織委員会の会合が開催されました。

いよいよ2020年の開催に向けて実務レベルで始動のオリンピックですが、会場建設の見直しなど問題も発生しています。

IOCとの会合
(画像引用:JOC公式HPより)

雇用創出効果をめぐる予想と現実、インフラ整備の問題、会場建設問題などは、現在W杯開催、2年後のオリンピックをひかえたブラジルでも噴き出しています。

W杯建設中のスタジアム
(画像引用:ケンプラッツ「ブラジルW杯競技場、半数が未完の理由」より 写真:ブラジルW杯組織委員会提供

オリンピックを含め、この手の大型競技大会開催では、それによる経済効果についてはよく言われていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

そしてデメリット等はないのでしょうか。

 

メリット

今回のブラジルW杯・リオデジャネイロ五輪でもそうですが、まず、この類いの「国際競技大会」はその開催に伴う競技施設・インフラ整備などによって大きな雇用を生み出します。

オリンピックに伴いインフラ整備を行った最初の例は、1936年のベルリン大会といわれています。

ベルリンオリンピック
(画像引用:Wikipediaより)

国威発揚のために大規模な競技場を建設し、テレビ放送実験を行い、通信インフラ整備も試みたとされています。

最近では、スラム化した地域を再開発するなどして10兆円規模の経済波及効果をもたらしたロンドン大会の例などが挙げられています。

この時、五輪開催決定の2004年から開催した2012年までの9年間で36万から40万人の雇用創出効果があったとしています。(出展:日本総研レポートより)

ロンドン市街

この数字自体がどれだけの規模なのか、ピンとこない方も多いかと思います。

1年あたりになおすと増えた就労人口は単純計算で4万人となりますが、この雇用創出効果を日本の現状に当てはめてみます。

2012年の就業者数は6270万人、失業者数は285万人、完全失業率が4.3%。

2013年が就業者数は6311万人、失業者数は265万人、完全失業率が4.0%。

2012年から2013年までに増加した就業者数が41万人、失業者数は20万人減少、完全失業率は0.3%改善しています。

総務省統計局 労働力長期時系列データより)

4万人の増加というと、ここでいう1年間の就業者数が1割増になるということになります。

今回の東京大会についての経済効果試算もいくつかの団体が算出しています。

21万人から121万人とかなり幅が広いですが、いずれにしてもロンドン五輪なみの雇用創出効果は期待できるとみているようです。

これらには五輪観戦で来日する外国人観光客増加という効果も含んでいますので、「観光」特需も想定されます。

スカイツリー観光

さらに、観光客の増加や雇用創出効果といったもの以外に、交通機関や道路網の整備、都市機能の改善等が行われることから、経済活動の効率化といった「副産物」も期待できるところです。

 

「メリット」に対する警笛~2014年ブラジルの現実~

これらのメリットはまだ実際には発生していません。

ただ、同じように試算が出され、実際に競技場建設やインフラ整備を行って(いる)きた国の状況を私たちは目の当たりにしています。

そう、サッカーW杯が行われ、2年後にオリンピック開催を控えたブラジルです。

2010年7月の段階では「7兆円の経済効果」を試算しており、開催までの5年間で2009年のGDPの2.2%に相当する645億レアル(3.2兆円:当時)の底上げを期待していました。

しかし実際のところは開催前から多くの問題を抱え、一部では本当に開催できるのか、という声すら聞こえました。

2007年10月30日のFIFA(国際サッカー連盟)理事会でのW杯ブラジル大会開催正式決定から約6年と7ヶ月。

これだけの期間がありながら、当初計画していた競技場建設やインフラ整備などについて、開催までに完成できませんでした。

バルクFIFA事務局長の視察
(画像引用:MEGA BRASILより 写真/Josi Pettengill/Secom-MT

開始の2年前、2012年3月2日FIFAのバルク事務局長はあまりの整備の遅れに「尻を蹴飛ばす必要がある」などと語ったと言われていますが、事の真相はさておき、この遅れは重大な問題となりました。

いろいろすったもんだの末、結局のところは全競技場、インフラ整備とも完成することなくW杯開催を迎え、今だ工事中のところも多数あるという事態。

そして2年後のリオデジャネイロ五輪に間に合うかについても悲観的に見る向きがあります。

今年の4月29日、国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長はリオデジャネイロ五輪の準備状況について悲観的発言をして物議を醸し出しました。

国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長は29日、シドニーで行われた五輪関連の会議で、2016年リオデジャネイロ五輪の準備について「私が経験した中で最悪だ。(準備が遅れた04年の)アテネよりも悪い」と酷評した。

リオ五輪の準備は最悪「非常に心配だ」(日刊スポーツ4月29日より抜粋)

この発言は数日後撤回されましたが、準備に対する懸念は今だ続いています。

これらの原因はブラジル行政機関の許認可制度の複雑さ、各州と連邦政府の確執などありますが、当初予定していた予算をオーバーしてしまい資金不足に陥ってしまったということが大きいといえます。

競技場建設予算を例にとると、当初は26億レアル(約1188億円)だったのが実際に工事を始めてみると89億レアル(約4065億円)を超えてしまうという事態に陥りました。

この競技場・インフラ整備の遅れは、ダイレクトに経済効果に影響してきています。

「ブラジル襲う幻滅の波 W杯の経済効果に失望」(2014年5月29日 ウォールストリートジャーナル

「W杯ブラジル大会の経済効果は期待できず、米金融企業が分析」(2014年5月24日 CNN

 

ブラジルデモ
(画像引用:Number webより)

これらにはその国特有の事情や国民性があることも否定できず、日本には当てはまらない点が多いことも事実です。

しかし、これら大規模競技大会に共通する「高騰する予算」などといった点では、東京も決して他人事ではいられないという現実を突きつけられています。

現に、国立競技場建て替えに伴う解体工事の入札が不調で、入札やり直しとなり工事開始が遅れる見込みとなっています。

国立競技場、解体工事入札不調に 作業遅れ懸念(2014年6月11日 日本経済新聞)

このブラジルでの現実を踏まえていくと、オリンピック開催のデメリットも見えてきます。

 

デメリット

オリンピック開催のデメリットをあげるとしたら、第一に「財政負担上昇の可能性」があげられるでしょう。

2020年東京五輪は、大会の運営費、人件費、広告宣伝費等の直接予算が3412億円、競技場建設や通信インフラ整備など間接予算が4887億円、合計8299億円が想定されています。(TOKYO 2020 立候補ファイルより)

直接予算分に関しては放映権料やスポンサー料などで回収する予定で、批判もありますが、放映権料が大会ごとに上昇している現状ではほぼ問題ないといえるでしょう。

問題となるのは、間接予算の方です。

選手村などは、大手ゼネコンなどが資金を出して建設し、大会組織委員会が借り受ける形をとり、五輪終了後は分譲住宅として売り出したり、賃貸、宿泊施設などとして利用し、そこから資金を回収する形をとります。

計画通り資金回収ができればいいのですが、バブル崩壊後のような状況になるリスクも含んでいます。

実際問題として東京都が建設する新施設10カ所について、東日本大震災後の建築資材高騰や人件費の上昇により、五輪誘致の際に想定していた建築費1538億円が約3800億円に膨れあがるとの再試算が出ており、整備計画見直しを余儀なくされています。

新国立競技場
(画像引用:ケンプラッツより 日本スポーツ振興センター

このように建設費が上昇すれば回収しなければならない額も上昇することになり、五輪後の資金回収が困難になることも想定されます。

そうなった場合、過去の事例に従って「公的資金投入」が行われて「増税」に至る可能性も否定できません。

 

2020年の東京オリンピックにおけるメリット・デメリットは完全に背中合わせのものといえます。

今回ブラジルで起きているインフラ整備の遅れや経済効果の下方修正は、図らずも新興国が大規模競技会開催を行うことの難しさを露呈してしまったともいえます。

2020年の東京では、大会が開催されてからも工事を続けるような事態にはならないとは思いますが、建設費の高騰などによるリスクの増大は十分あり得ます。

残り時間はそう多くありませんが、2020年の東京五輪は、震災の悲劇や長く続いた不景気から立ち直り始めたこの国の姿を、恥ずかしくなく見せられるような大会にしたいものです。



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