伝統的な和紙の作り方とは? 手漉和紙技術が無形文化遺産へ!

和紙文化遺産

さる10月28日、日本政府が無形文化遺産として提案している「和紙 日本の手漉和紙技術」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は事前審査を行う補助機関が登録を求める「記載」の勧告を行ったと、公表しました。

この勧告を受けて、ユネスコは11月24日よりフランス・パリで行われる政府間委員会における正式決定を行い、無形文化遺産として登録する見通しです。

これにより、日本は昨年の「和食 日本人の伝統的な食文化」に続き2年連続で無形文化遺産を登録することとなりました。

ただ、今回はこれまで登録された「能楽」や「歌舞伎」など21件とは異なり、2009年に登録された「石州半紙」に「細川紙」(埼玉県)、「本美濃紙」(岐阜県)を加え、「和紙の技術」として再登録する、というもので日本としては初めての拡張提案でした。

和紙技術

報道機関は速報で伝え、選ばれた各地は喜びの声に沸きました。

「和紙」無形遺産に ユネスコ、来月正式登録へ

(産経新聞号外 2014年10月28日)

この決定が地方活性化につながるものとして期待する声が政府からも上がっています。

「和紙」の無形文化遺産への登録勧告について、下村博文文部科学相は28日の会見で「和紙の文化遺産としての価値が社会で広く認識されると共に、各地における振興と継承の取り組みが一層促進され、地方創生にもつながることが期待される」と話した。
朝日新聞電子版 2014年10月28日より抜粋

このように盛り上がりを見せていますが、登録勧告されているのは「和紙」そのものではなく、「和紙の製造技術」であることは再度認識しておくべきでしょう。

 

重要無形文化財としての3紙

今回登録勧告された3紙は、原料にクワ科の植物「楮(コウゾ)」の樹皮の繊維を使い、手漉きで作られているということなどが共通項としてあげられます。

さらにこの3紙は国の重要無形文化財として既に登録されています。

その要件項目は以下のとおりとなっています。

一、原料はこうぞのみであること。
二、伝統的な製法と製紙用具によること。
1.白皮作業を行い、煮熟には草木灰又はソーダ灰を使用すること。
2.薬品漂白は行わず、填料を紙料に添加しないこと。
3.叩解は、手打ちまたはこれに準じた方法で行うこと。
4.抄造は「ねり」にとろろあおいを用い、「かぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀による流漉きであること。
5.板干しによる乾燥であること。
三、伝統的な(各紙の名称)の色沢、地合等の特質を保持すること。
本美濃紙HPより抜粋して作成)

抄造や乾燥方法については、各紙多少の違った表記となっている(細川紙の場合は鉄板乾燥も認められているなど)模様ですが、概ねこのような形となっています。
そして基本的に、国から認められた指定団体のみ重要無形文化財としての和紙を漉くことができることになっています。

今回の無形文化遺産についても、この重要無形文化財の要件が適用されていると考えてよいでしょう。

 

伝統的な紙漉き方法をみてみる

「伝統的な紙漉き」とは具体的にどんなものなのでしょうか。

コウゾ
(出展:かみこやHPより)

まず、どの紙も「楮(コウゾ)」を使用してつくります。

クワ科の落葉低木で、本州から沖縄にかけての広い地域に分布しています。

 

原料の前処理(白皮作業)

12月から1月にかけて刈り取られた楮の原木は70㎝~100㎝程度に切りそろえられ、釜などで蒸されます。

蒸し上がった楮は外皮をはぎ取り、それを天日干して乾燥させます。

黒皮を乾燥
(出典:石州半紙HPより)

乾燥した楮の外皮は水に浸してやわらかくしてから、皮を削っていきます。

楮の皮は「黒皮」「甘皮」「白皮」の三層からなっていますが、紙の原料としては「白皮」が使われます。

削られてできた白皮は再度乾燥させます。

 

煮熟

乾燥した白皮を清水にさらすことで、不純物を取り除き自然漂白処理します。

煮熟する
(出典:本美濃紙HPより)

さらにこの白皮を、草木灰やソーダ灰を混ぜた水で2~3時間ほど煮出します。

この作業により作業しやすいように白皮を柔らかくし、皮に含まれた灰汁などの不純物を分離させます。

このあと再度清水で洗い流し、灰汁抜きやゴミ取り、自然漂白を行います。

現在流通している紙の多くは漂白に塩素を使用したり、紙自体に填料(繊維と繊維の間に充填する薬品)を使用して色を整えたりしていますが、これら3紙では使用せず、昔ながらの自然漂白を行っています。

 

叩解

最終的な紙漉き作業のために、楮の繊維がさらにバラバラになるような作業を行います。

叩解する
(出典:石州半紙HPより)

白皮を硬い木盤や石台などの上に敷いて、樫の木といった堅い木で出来た棒や木槌で叩き繊維をほぐします。

 

抄造(紙漉き)

叩解で繊維をほぐした原料(紙料)を、「漉き舟」といわれる水槽に入れ、馬鍬(マグワ)と呼ばれるまぜ棒でかき回します。

トロロアオイの根
(出展:かみこやHPより)

これにとろろあおいの根からつくられた粘液(ねり)を加え、さらにかき混ぜます。

「ねり」には、水に入れたときに繊維を均一に分散させるなどの働きはありますが、繊維同士をつなげるような働きはありません。

紙漉きする
(出典:本美濃紙HPより)

そして、竹でつくられた簀を挟んだ「漉き桁」で水をすくい、前後または前後左右に揺すり紙料の層をつくります。

余分な水を捨て、再度漉き舟から紙料をすくいあげ……と動作を繰り返します。

こうすることで、繊維が絡み合い和紙としての層ができていくのです。

適当な厚さの層ができたら、その濡れた状態の紙を背後の「紙床」と呼ばれる場所に積み重ねていきます。

この漉きあげられた和紙はこのあと場所を移し、適当な高さに積み上げて重しをおき脱水を行います。

 

乾燥

脱水した和紙を1枚ずつ剥がして、乾燥させます。

天日干しする
(出典:石州半紙HPより)

木の板に貼り付けて日光により乾燥させるのが天日干し(板干し)です。

一方で鉄やステンレスなどの板に貼り付け、蒸気などで乾燥させる鉄板乾燥という方法も行われています。

天日干しでつくられたものは柔軟性があり、鉄板乾燥でつくられたものは平滑で硬度が高いといわれています。

この乾いたものを検品・裁断して最終的に「和紙」が完成します。

 

和紙と洋紙の違い

京都迎賓館障子京都迎賓館聚楽の間
(引用:内閣府HPより)

今回無形文化遺産に勧告されて和紙は、書道や絵画で使われる以外にも、障子や照明器具のカバーなどといった建築資材、高級和傘やうちわなどの生活素材など幅広く使われています。

これら和紙は比較的「高級感」をかもし出しており、私たちが普段使っている所謂「洋紙」とは違うものと認識されています。

現在出回っている多くの紙が「パルプ」と呼ばれる分離した植物繊維を用いて製紙を行っています。

私たちが普段使っている洋紙は木材の樹皮そのままか、それらをチップ化したものを使用する「木材パルプ」というものを使い製紙が行われています。

それに対し、今回ご紹介した伝統的な紙漉きで使われる「楮」などは「非木材パルプ」、再生紙などの原料については「古紙パルプ」と呼ばれています。

「木材パルプ」でつくられる洋紙は機械化による大量生産に向いていて、しかもインクや印刷との相性がよいため、近代以降メディアの発達と相まって爆発的に増産されるようになりました。

これに対し、和紙は生産性においては洋紙に劣っており、インクや印刷との相性もよくありませんでした。

近代以降において生産業者がインクや印刷との相性を改善した和紙を開発したり、設備の近代化に努めたりしたことでこれらの差は以前に比べれば縮まっていますが、それでも大量印刷物については洋紙の方に分があることには変わっていません。

 

おわりに

近代以降の洋紙の隆盛に対して、生産業者の努力や障子や和傘の原料としての需要があったことで、和紙業界は何とか衰退・消滅は免れてきました。

しかし、第二次世界大戦後の高度経済成長期になると、和紙職人などの後継者不足や生活の欧米化、住宅様式の変化による和紙の需要低減で、技術継承の危機が叫ばれるようになります。

日本には今回の3紙以外にも数多くの和紙が存在していますが、技術継承団体が存在しておらず技術消滅の危機に直面しているようなものも併存しています。

「日本の手漉き和紙技術」の無形文化遺産登録を機に、和紙全体にもっとスポットライトがあたり技術継承への道が開かれることを望んでやみません。



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